
数々の樹木、禅の庭、そしてマーグ財団美術館の展示作品をテーマにした書的で、詩的なアート散歩
2024年7月26日の午前と午後の二回に渡り、日本人アーティストの松井ユカが、ミロの迷宮からジャコメッティの中庭まで歩き周りながら、美術館庭園内にある植物(樹々)や鉱物(石)、展示作品、そしてマーグ財団美術館の60周年記念へオマージュを捧げる6つのパフォーマンスを行った。
演出 : マチュー・セゲラ
I – 歩く松
( 場所:ミロの「アーチ」から松の木まで、ミロのセラミック壁画の前 )

松井ユカは、木をモチーフに描いた大きな暖簾からステージに登場する。彼女は黒塗りの盆を持ち、その上に松の枝が置かれている。伴奏は雅楽。
II – 木グラフィー
(場所:ミロのセラミック壁画の前)

アーティストは、松の木の近くで迷い込み、そこで幹の周りに巻かれた和紙に、植物の筆で松を描く。観客の前で「木グラフィー」を制作する。

同時にマチュー・セゲラによるアンリ・マティスの「木」に関する文章(抜粋)の朗読。

午後の部で松井ユカが制作した「木グラフィー」
III – 語る木
(樫の木の下)

松井ユカは、マーグ一家が大切にしている樫の木の枝に吊るした60個の「風鈴」(マーグ財団60周年を記念)のインスタレーションの前で、筆で和歌を書き、3つの和歌を唱う。風鈴の音は、詩の抜粋が書かれた短冊や抽象画で揺れている。マーグ財団の雑誌『Argile』に掲載されている詩のいくつかを抜粋。


マチュー・セゲラが詩や文章をフランス語で朗読。
IV – 思考する石
(樫の木の下)

松井ユカは「ミロの迷宮」が作られる以前からあった石の周りに、他の14個の「紙の石」を配置し、京都の龍安寺の禅庭にある名高い15の石を形成した。ミロ、マルロー、スーラージュらが賞賛した、木々に囲まれた枯山水の庭園である。

マチュー・セゲラが、ピエール・スーラージュによる京都・龍安寺の石庭と樹木についての文章(抜粋)を朗読。
V – 太陽のダンス
(場所:ミロの彫刻「ラ・フォルシェ」の前)

ジョアン・ミロの彫刻に見られる「円」と、アレクサンダー・カルダーのモビール(1965年)に描かれた「三つの黄色い太陽」と呼応する、松井ユカによる伝統的な扇の舞。
色とりどりの帯締めで飾られた2本の幹を通り抜け、ジャコメッティの中庭に入る。この着物の帯締めは、絹(桑の葉を食べる蚕の糸)から組まれており、松の木を鮮やかに彩る。
VI – 砂の書
(場所 : ジャコメッティの中庭、松林の前)

透明な糊と黒い砂を使ってキャンバスに文字が描かれる。

伴奏:尺八

午前中は「樹」、午後の終わりには「美」という文字が描かれた。
この二つの文字は、60周年を迎えたマーグ財団美術館へのオマージュとして、パフォーマンスを締めくくる。
マーグ財団美術館のサイトはこちらからご覧いただけます。(フランス語と英語のみ)