ピエール・スーラージュへのオマージュ (2022年11月30日)

去る11月30日(水)、モンペリエのファーブル美術館にて、ミシェル・ヒレール館長、村田優久夫総領事始め、多くの観客の前で、ピエール・スーラージュへ日本の賛辞を捧げました。

オクシタニー 州での日本週間(2022年11月25日〜12月2日) の一環に於いて、以下のような形で敬意を表しました。

– スーラージュの作品が展示されているファーブル美術館の3Fフロアで、書家、アーティストの松井ユカによる芸術的パフォーマンス。この画家の作品に触発された彼女は、過去5年間、セットにあるアーティスト・レジデンスに滞在中、定期的にピエール・スーラージュと会ってきました。

– 1958年にスーラージュを京都で迎えた日本人の友人、吉川逸治の詩集「Poèmes / 詩」の刊行。この詩集には、ピエール・スーラージュが亡くなる直前に選んだ未発表の作品と、コレット・スーラージュが日本で撮影した写真が収録されています (1)。

– ピエール・スーラージュと日本との類まれなる関係について、歴史家のマチュー・セゲラによる講演会。講演は「Soulages, au soleil du Japon / スーラージュ、日本の太陽に照らされて」と題し、豊かな図像と共に解説。

ファーブル美術館 プログラム

15:00-16:00: 「スーラージュ、日本の太陽に照らされて」マチュー・セゲラによる講演。大型スクリーンに映し出された図像資料と共に解説。

16:00 : ポリプティクスの大作「Outrenoir  / ウートルノワール」が展示されている3階の大きなフロアにて、 松井ユカによるパフォーマンス。

場面 I – « 彼は天に輝く» (3)

雅楽の音楽をバックに黒い着物姿の松井ユカが登場(2)黒漆の盆を置き、扇子に詩を書き始める。松井ユカによる5つの短詩の朗読。扇子を使ったパフォーマンス。吉川の詩を「交わる書」で表現、最後に落款印を押して作品を完成。

場面 II – 京都の庭にて : 石と梵鐘

マチュー・セゲラによる、龍安寺の石庭に関するピエール・スーラージュのテキトの朗読。 松井ユカは、石庭の石を象徴する円錐形の和紙のオリジナル作品15点を地面に並べる。それらは寺院と同じ構成で配置され、15 の円錐形のオブジェのうち 14個 しか同時に見ることができない。日本の寺院から繰り返し聞こえてくる梵鐘の音を流し、その音の振動を聞きながら周囲の空間を推測する作家の感覚を、スーラージュのテキストを読みながら表現する。

場面 III – 黒、砂の書 

キャンバスに糊と黒砂で書く「砂の書」を、 松井ユカが観客の前で作り、砂が流れ、文字が現れたところで、公演終了。

(1) 吉川逸治, Poèmes / 詩, メリディアンヌ出版, モンペリエ, 2023年1月
(2) 雅楽とは、8世紀から日本の宮廷で演奏されていた儀式音楽の名称である。ピエール・スーラージュは、この音楽の深い響きとゆったりとしたリズムを気に入っていた。
(3) ピエール・スーラージュの日本の友人、吉川逸二(1908-2002)の詩の一節から。

ViaOccitanie チャンネルで 2022 年 12 月 1 日に放送されたテレビ レポートのリンク →  Lien pour visionner le reportage télévisé diffusé le 1er décembre 2022 sur la chaîne ViaOccitanie 

 

▪️イベント当日の写真リスト

 

南仏セット日誌

南仏セット日誌  

対岸からの「ラ・ポワント・クールト 」

私は南フランスの地中海に面するセットという港町で、2020年から毎年夏の間、アーティスト・イン・レジデンス A.T.E.N.Aに滞在し、アート活動を行っている。この街の名前は、”Sète”と綴るのでカタカナで表すとしたら、”セート”だと思うのだが、フランス人たちは” sɛ.təː ”と発音しているので、実際は ”セット” の方が近い。これは、1927年まで この街の名前は、”Cette”と綴られていたことに由来している。この綴りだと、指示形容詞の “これ” と全く同じ綴りなので、紛らわしい為変更になった、とフランスの友人が教えてくれた。
この日誌では、日本ではまだあまり知られていないセットの魅力について、私が出会った愛しいものたち、風景、人々、アート、文化、食について紹介したいと思う。

1.  ラ・ポワント・クールト
2. ポール・ヴァレリー
3. ティエル – TIELLE
4. モン・サン・クレール
5. ピエール・スーラージュ
6. モーリス・エリ・サルトゥー
7. ダニエル・ドゥズーズ
8. ジュット

ラ・ポワント・クールト

1.  ラ・ポワント・クールト

私がこの漁村の存在を知ったのは、アニエス・ヴァルダの映画でだった。
白黒の、時間を切り取ったかのような映像が印象的な作品。この映画は、二つのストーリが交わらずに進んで行く。ひとつは貧困の漁村の日常生活を描いた物語、もう一つは、パリから来たすれ違っているカップルの物語だ。

2018年にロデーズにあるスーラージュ美術館でのパフォーマンスの後、光栄にも、スーラージュ氏本人にお会いする為、セットの地へ初めて踏み入れた。その際にセットへ行くならぜひこの漁村へ寄ってみたいと思ったのが、ここを訪れる最初の機会だった。

そこにはタンクトップ姿の陽気なおじいさんたちが釣り糸を垂らし、その横には洗濯物がたなびく。時間が止まったかのような雲のない青空の下、小さな路地には汚れた毛並みの猫たちがゆっくり歩き、日陰では犬が寝ている、なんとも長閑な漁村だった。

それからセットに来る度に、ポワント・クールトに寄っている。ここには「ル・パッサージュ」と「シェ・ネネ」という新鮮な魚介類が食べられる庶民的なレストランもあるのだ。前者は、天板焼き料理がメインで、後者はメニューが4種類ほどの地元の人たちに人気のレストランである。

特筆すべきは、トー湖上に少し突き出て並んでいる掘っ建て小屋のレストラン「シェ・ネネ」で、ここがレストランだと知らないと気づかない。まるでアジアのような情緒ある水上レストランになっている。1週間ほど先の予約は必須で、地元の人たちで常にいっぱいという状況である。

この掘っ建て小屋(レストラン)に向かうエントランスには、猫小屋がアパルトルマンのように並び、住猫たちが両脇に置物のように並び、時にはノラノラと歩いている。そして、一匹だけレストランに住んでいる店主の飼い猫がいて、マイペースなその姿は、常連の客に大人気である。もちろん猫が苦手な人にはオススメできないレストランである。因みに、犬(大型犬)が飼い主に連れられて来ていたけれど、怖がってなかなか中にたどり着けず、やっとの思いで席の下に入っても、狭くて尻尾を踏まれそうになったり、見ていて可哀想だった。猫が大丈夫な人間のみで行った方がいい。

お料理については、豪快でシンプル。ただテーブルも場所も狭く、このコロナ下という状況においても衛生面で不安はあるし、お皿やコップなどもあまりに粗雑で、ムール貝の殻捨ては、もはやゴミ箱のようなものがテーブル上に置かれている。アジアの屋台を想像するといいと思う。お客さんたちは皆楽しそうに大皿で運ばれてくる魚介類やパスタを頬張っている。かくして私たちもこの夜は、この気分を楽しむことにした。

ポワント・クールトは、もちろんぷらりとこの小さな漁村を訪れるだけでも十分楽しめるけれど、気取らないレストランで食事するのも、地元の雰囲気を満喫したい人には、とてもおすすめである。

松井ユカ (2022年8月)

アンリ・マティスへのオマージュ

Performance de l’artiste japonaise Yuka Matsui
アートパフォーマンス
2022年8月6日 12:00より エントランスホール *「花と果実」前にて

* アンリ・マティス 「花と果実」 1952-53 切り紙絵 410×870cm ニース市マティス美術館蔵

プログラム

1.  「花」 和紙 5色 + 白

2.  「円相の花」

3.「海」砂の書 コバルトブルーの砂

アーティスト : 松井ユカ
ギターリスト : ティエリー・コナン
企画・協力 : マティス美術館(ニース市)
プレゼンター:マチュー・セゲラ

 

浴衣のモチーフは、マグノリアを選びました。

アンリ・マティス (1869-1954)
《マグノリアのある静物画》
カンヴァス,油彩 74×101 cm
パリ,ポンピドゥーセンター

workshop

定期的なお教室の他に、国内海外でのワークショップも企画に応じて行っています。

過去のワークショップ :

2022

マティス美術館(ニース)

カンヌ市 書のイベント(カンヌ)

アーティストインレジデンス A.T.E.N.A(セット)

My little box (表参道)企業向け

2021

セット美術大学(セット)2日間スタージュ

アーティストインレジデンス A.T.E.N.A(セット)

2020

2019

モンペリエ美術大学(モンペリエ)

2018

スーラージュ美術館

トラシー=ル=モント 日本週間 (トラシー=ル=モント )

2017

PDF

2016

Paris 13 大学

 

セット美術大学での研修クラス

セット美術大学での夏季研修クラス

日程 : 2021年7月17日、18日
場所 : セット美術大学
講師 : リズ・シュヴァリエ(造形美術家)、松井ユカ(書家、美術家)

プログラム :

午前 :
参加者と講師の自己紹介
書のデモンストレーション
書のワークショップ

午後:
パフォーマンス : 木グラフィ
各自、庭の木をスケッチ
大きな紙に、身体全体を使って描く
総評

最後に :
風鈴インスタレーション(木の葉の旋律)を参加者と共に

*風鈴インスタレーションのコンセプトはこちらからご覧になれます

 

《ポメリー キュヴェ・ルイーズ 2005 記念》

《ポメリー キュヴェ・ルイーズ 2005 記念》
アマン東京  アルヴァ   2022年5月12日

 

シャンパンのポメリーがアマン東京内のレストラン「アルヴァ」で特別ディナーを開催。
ポメリー キュヴェ・ルイーズに込めたエスプリを書に表現させて頂きました。

ブルー … 純粋。水と環境保護への取り組み
ピンク…  洗練。マダム・ポメリーの先見の明
ゴールド…高貴。メゾンの美しい遺産と豊かさ

今回、黒の砂に加えて、キュヴェ・ルイーズの象徴となるこの三色を作りました。「純」という漢字は、師井社長と選びました。

着物は水をイメージした色をベースに、金の錦糸で織られた豪華な帯、ピンクの帯締めを選びました。

ポメリー始め、ご協力いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。